クレアチンは本当に効果があるのか?

クレアチンというサプリメントは、筋トレをしている人であれば一度は耳にしたことがあると思います。プロアスリートから一般の方まで広く使われており、「飲んだ方が良い」「いや必要ない」など、さまざまな意見が飛び交います。

クレアチンの効果

・筋力向上に役立つ

・回復を早める可能性

・脳にも良い影響があるかもしれない

・男女差・年齢差も関係する

■ 1. クレアチンとは何か?

「筋肉が動く仕組み」を補う自然物質

まず前提として、クレアチンは薬ではありません。肉や魚にも含まれる自然の化合物で、体内でも合成され、人間の筋肉や脳に広く存在しています。

身体が「力を出すとき」の燃料の一つがATP(アデノシン三リン酸)。

このATPは数秒で使い切られてしまいますが、クレアチンはそのATPを“再合成する手助け”をします。

つまり、クレアチンはこう理解できます。

「瞬発力や筋力を発揮するときに、燃料タンクを少し大きくしてくれる存在」

これが、筋トレとクレアチンの相性が良いと言われる理由です。

■ 2. クレアチンにはどんな種類がある?

市場には様々なクレアチンがありますが、

**研究で最も多く使われているのは「クレアチン・モノハイドレート」**です。

・安全性

・効果

・価格

・データ量

すべての面で最も信頼性があります。

以下の4つの研究もすべて、この「クレアチンモノハイドレート」に関わる内容です。

■ 3. 最新研究①:筋肉痛からの回復を助ける可能性

山口翔太(2025)

“偏心性運動で傷ついた筋肉”の回復がわずかに早まる傾向

この研究は、トレーニングによって起きる筋肉損傷、特に「偏心性運動(ゆっくり下ろす動作)」で起こるダメージに対して、クレアチンがどう働くかを調べたものです。

研究デザインは非常に信頼度が高い「二重盲検・無作為化・プラセボ対照試験」。

参加者は性別と年齢を分けて分析し、より細かく傾向を調べています。

報告されたポイントは以下の通りです。

・筋力の回復がやや早かった

・筋肉の炎症マーカーの改善が早い傾向

・性別や年齢で反応に差があった(若い男性が最も反応しやすい傾向)

結論としてはこうなります。

「劇的ではないが、トレーニング後の疲労回復を穏やかに後押しする」

筋肉痛がゼロになるわけではありませんが、

“翌日の回復スピードがわずかに違う”という感覚に近いものです。

トレーニング頻度の高いクライアントには価値のある効果です。

■ 4. 最新研究②:筋肥大の土台をつくる

Steen Olsen(2006)

筋肉を大きくする鍵「サテライト細胞」が増えた

筋肥大は、単にトレーニングだけで起こるわけではありません。

筋肉の中にある「サテライト細胞(筋の再生担当)」が刺激され、筋繊維の核(ミオニュクリ)が増えることで、筋肉は成長しやすくなります。

ウエイトトレーニング + クレアチン → サテライト細胞とミオニュクリが増えた

つまり、

・筋肉が「回復」「成長」しやすい状態をつくる

・長期的に筋肥大のポテンシャルが高まる

という結論に至っています。

「クレアチンは筋肥大のスイッチを押す細胞をサポートする」

というイメージがわかりやすいでしょう。

短期間で劇的な変化が出るものではありませんが、

筋肉を大切に育てたい人にとって強力な味方になります。

■ 5. 最新研究③:長時間運動後の“グリコーゲン回復”を強化

Paul A. Roberts(2016)

糖質と一緒にクレアチンを摂ると、エネルギー回復が早まりやすい

この研究は、長時間の運動でガッツリ疲れ切った人を対象にしています。

例えばマラソン、長距離ランナー、スポーツ選手などです。

長時間運動をすると筋肉の中の「グリコーゲン(エネルギー源)」が枯渇しますが、

糖質+クレアチンで回復がどう変わるかを調べました。

結果はこうでした。

糖質だけよりも、糖質 + クレアチンの方がグリコーゲン回復量が多かった。

つまり、

・トレーニング頻度が高い人

・長時間の練習をする人

・疲れが抜けにくい人

こうしたタイプには大きなメリットがあります。

「エネルギーの回復を早める補助剤」

としての効果があります。

■ 6. 最新研究④:脳のパフォーマンスにも影響

Julia F. Sandkühler(2023)

作業記憶・集中力など、一部の認知機能が改善

クレアチンは「筋肉のサプリ」というイメージが強いですが、実は脳でも多く使われています。

この研究では、クレアチン摂取による“思考・集中力”への影響を調べました。

結果は次のように報告されています。

・作業記憶(短時間保持しながら処理する能力)が改善

・注意力・集中力で改善がみられたタスクがある

劇的な変化ではありませんが、

デスクワークや受験期の学生にも一定のメリットが示唆されています。

「脳も筋肉と同じで、エネルギーの補助が効きやすい」

そんなイメージが近いです。

■ 7. クレアチンの効果をまとめるとどうなるか?

科学的にもっとも“安定感”のあるサプリ

4つの研究から読み取れることを整理すると、クレアチンは次の特徴を持ちます。

● 筋力・瞬発力

→ ATP再合成のサポートにより向上しやすい

● 筋肥大

→ サテライト細胞の増加に関与し、成長しやすい体をつくる

● 回復

→ 筋ダメージからの回復速度が少し早まる傾向

→ グリコーゲン回復にも寄与

● 認知機能

→ 集中力・作業記憶など一部タスクで改善傾向

いずれも「魔法のように劇的な変化」ではありません。

しかし、研究の数・質・一貫性を見ても、

“最もエビデンスが揃っているトレーニング系サプリ”

と言える位置づけです。

■ 8. クレアチンは誰が飲むべきか?

具体的には以下のような方に向いています。

・週3〜4回以上トレーニングしている

・筋肥大を狙っている

・ベンチプレス・スクワット・デッドリフトなどを伸ばしたい

・長時間のスポーツをしている

・疲労が抜けにくい

・集中力が落ちやすい

・食事量が少なく、肉類をあまり食べない (高齢者や女性はこのケースが多い)

クレアチンは安全性が高く、長期的に見ても問題の報告はほとんどありません。

腎機能に問題のある方だけは医師に確認が必要ですが、それ以外の健康な方であれば広く使えます。

■ 9. クレアチンの飲み方

クレアチンの基本はシンプルです。

● 1日の必要量

3〜5g

● 飲むタイミング

いつでもOK

(厳密な違いは研究的には非常に小さい)

● 一緒に飲むと良いもの

糖質(グリコーゲン回復が強化される)

プロテインと混ぜても問題なし

「運動前がいい」「トレーニング後がいい」などと言われることもありますが、

実際には“毎日続けること”が最も重要です。

■ 10. クレアチンに関するよくある誤解

誤解①:太る?

→ 水分が筋肉に入り“張りが出る”だけで脂肪は増えない

誤解②:腎臓に悪い?

→ 健康な人では問題なし(多くの研究で安全性が確認)

誤解③:女性は飲まなくていい?

→ むしろ恩恵が大きい可能性がある(研究で反応しやすいという報告も)

誤解④:飲まない方がナチュラル?

→ 肉・魚にも含まれる自然物質なので「非ナチュラル」ではない

■ 11. パーソナルトレーナーとしての結論

クレアチンは “努力を底上げする” パートナー

4つの研究が示すクレアチンの姿を、一言でまとめるとこうなります。

「努力を後押しする、もっとも確度の高いサプリメント」

飲むだけで筋肉が勝手につくわけではありません。

しかし、トレーニング・食事・睡眠という基本をしっかりやっている人にとっては、

・筋力アップの効率を高め

・筋肥大のポテンシャルを上げ

・回復をわずかに加速し

・脳のパフォーマンスも支え

全体の“伸び幅”を大きくしてくれる可能性があります。

努力を続けている人こそ効果を実感しやすいサプリ。それがクレアチンです。

■ 12. おわりに

科学の裏付けがあるからこそ、安心して勧められる

サプリメントの世界には、誇張された宣伝や曖昧な情報も多くあります。

しかし、クレアチンに関しては“非常に多くの研究が同じ方向を示している”という点が他とは大きく違います。

クレアチンは「頑張った分をきちんと結果に変えるための後押し」になります。

科学的に正しい知識を知ったうえで、

日々のトレーニングと組み合わせていく。

その積み重ねが、からだの変化を確かなものにしていきます。