安全に温まる入浴術:ヒートショックを避けるシンプルな習慣

入浴は疲れをほぐす手軽なリカバリー方法ですが、じつは温度や入るタイミングを間違えると身体に負担がかかりやすくなります。特に「急な温度変化」が大きいほど、血圧が上下に振られやすく、それがヒートショックと呼ばれる状態につながります。

寒い脱衣所から熱い浴槽に入ると、まず寒さで血管がキュッと縮まり、そのあと湯の熱さで急に開く。血圧の“上がる→下がる”の差が大きいほど、心臓はジェットコースターのような負荷を受けます。高齢者だけでなく、普段元気な人でも条件が重なれば起きるものです。

湯温が42℃を超えると、心拍数や血圧の変動がさらに強まり、のぼせやめまい、立ちくらみのリスクが増えます。若い人でも、スマホで動画や音楽を流しながら長風呂をしていると、体温が上がりすぎて同じように危険な状態を招きやすい。リラックスしているつもりが、実は身体の中では血圧が乱れ、脱水が進んでいたりします。

トレーニング後の入浴も少し気をつけた方がいい場面があります。運動直後は筋温が高く、血流が増えていて、末梢の血管が普段より開いた状態になっています。このタイミングで熱い風呂に入ると、血圧が急に下がって立ちくらみを起こすパターンが少なくありません。ジムのシャワー室でふらつく人がいるのは、だいたいこの流れです。

安全に入るコツはシンプルです。運動や外出から戻った直後は、まず汗と呼吸が落ち着くまで少し待つ。湯温は38〜40℃くらいの落ち着いた温度にする。長風呂は避けて10分以内にしておく。入る前後でコップ一杯の水を飲んでおけば、脱水の予防にもなります。飲酒後の入浴だけは避けたほうが無難です。血圧が下がりやすい状態に、さらに温度変化の刺激が重なると危険だからです。

身体に負担をかけずに温まりたいなら、以下のような流れが扱いやすくて安心です。

①入室前に軽く水分をとる

②38〜40℃で短めに温まる

③洗体

④上がったらまた少し水分をとる

⑤出たあと20〜30分は極端に冷えたりしないようにする

これだけでヒートショックのリスクは大きく減りますし、身体もラクなまま入浴を楽しめます。

入浴は本来気持ちの良い習慣なので、「ちょっとした温度の管理」と「タイミング」を押さえておくだけで、安全性がぐっと高まります。