『効かせる』だけでは伸びない ― トレーニング上級者が使い分ける意識

「筋肉に効かせろ」という考え方は、筋トレでは一般的ですが、常に正解ではありません。

実はこれは半分は正解で、半分はパフォーマンスを下げる原因にもなります。

その分かれ道になるのが、運動中の意識の向け方です。

内部フォーカスと外部フォーカス

運動学習の研究では、意識は次の2つに分けられます。

内部フォーカス

 筋肉や身体部位に意識を向ける

 例:「胸を使う」「太ももを意識する」

外部フォーカス

 動作の結果に意識を向ける

 例:「床を押す」「バーを天井に突き刺す」

研究では、動作が複雑になるほど外部フォーカスの方が筋力やパワーを発揮しやすいことが示されています。

多関節・高重量で起こる「効かせる」の罠

スクワットやベンチプレスなどの多関節種目では、

身体は本来、複数の筋肉が自動的に連動して動きます。

しかし動作中に

「今どの筋肉を使っているか」

と意識しすぎると、運動の自動制御が妨げられ、

結果として出力が下がることがあります。

そのため、筋力向上や高重量を狙う場面では、

フォーム確認はウォーミングアップセットで行う

• 挙上中は「床を押す」「バーを天井に突き刺す」

といった外部フォーカスの方が有効です。

単関節・筋肥大では話が逆転する

一方、アームカールやサイドレイズなどの単関節種目や、

中強度(最大筋力の60〜80%)で筋肥大を狙う場合は違います。

この場面では、対象筋を意識することで

筋活動量が高まることが研究でも示されています。

つまり、

• 出力重視 → 外部フォーカス

• 効かせる目的 → 内部フォーカス

と使い分ける必要があります。

トレーニング上級者の共通点

トレーニング上級者が無意識に行っているのは、

• 多関節・高重量 → 外部フォーカス

• 単関節・筋肥大 → 内部フォーカス

という状況に応じた意識の切り替えです。

常に「効かせる」のではなく、

目的に応じて意識のギアを変えることが、成果を分けます。