
トレーニングやスポーツを継続していくうえで避けて通れないのが、「ケガ」との向き合い方です。
なかでも、筋肉・腱・靱帯・骨・関節などの損傷は「筋骨格系の障害」として分類され、知識の有無がその後の回復や再発率に大きく影響します。
この記事では、打撲・筋損傷・捻挫・脱臼・腱炎・疲労骨折・慢性腰痛といった代表的な筋骨格系の傷害について、それぞれのメカニズムや症状、重症度、正しい対処法、そして予防策までをわかりやすく解説します。
① 打撲(Contusion)
● 定義
打撲とは、体を強打したことによって筋肉や皮下組織が損傷を受ける状態です。
皮膚に傷はないものの、内部では毛細血管が破れ、内出血が皮膚の変色として現れるのが特徴です。
● 主な原因
接触スポーツ(ラグビー、バスケットボールなど)での衝突 転倒による地面や物との衝撃 ダンベル・器具との衝突など
● 主な症状
圧痛、腫れ、熱感 皮膚の青紫色の変色(あざ) 可動域の一時的な制限
● 対応
急性期はRICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)を徹底 強い腫れがある場合は医療機関での画像診断を検討 回復期にはストレッチや軽度な筋力トレーニングを導入
② 筋損傷(Strain)=肉離れ
● 定義
筋損傷とは、筋肉や腱が急激に引き伸ばされたことで損傷する状態であり、一般的には「肉離れ」と呼ばれます。
伸張性収縮(筋肉が引き伸ばされながら力を出す動作)中に多く発生します。
● 主な原因
スプリント、ジャンプ、キックなどの爆発的な動作 柔軟性不足や筋力のアンバランス ウォームアップ不足
● 重症度分類
1度損傷:筋線維の過伸展。痛みは軽度で、運動可能なケースが多い。 2度損傷:部分断裂。強い痛みと内出血、腫れが見られる。 3度損傷:完全断裂。明らかな陥凹、筋力発揮不可。
● 主な症状
運動時の突然の鋭い痛み 力が入らない 内出血や陥凹(へこみ)
● 対応
急性期はRICE処置で炎症の拡大を防止 回復期にはアイソメトリック→コンセントリック→エキセントリック運動の段階的な復帰を行う 再発予防のために、柔軟性と筋力バランスの回復が必須
③ 捻挫(Sprain)
● 定義
捻挫は、関節に外力が加わって靱帯が損傷する状態です。関節が本来の可動範囲を超えて曲がることで発生し、靱帯の伸張や断裂を引き起こします。
● 主な発生部位
足関節(外側靱帯) 膝関節(前十字靱帯、内側側副靱帯など) 手首、肩関節など
● 重症度分類
1度:靱帯の伸張(微細損傷)。軽度の腫れと痛み。 2度:部分断裂。中等度の腫れ、痛み、可動域制限。 3度:完全断裂。不安定感、著しい腫張。手術が必要な場合も。
● 主な症状
急な関節の痛みと腫れ 内出血や運動制限 関節のぐらつき(重度の場合)
● 対応
RICE処置+固定(テーピングやサポーター) 段階的なリハビリで可動域と安定性を回復 中〜重度は整形外科での画像診断(MRIなど)を推奨
④ 脱臼(Dislocation)
● 定義
脱臼とは、関節を構成する骨同士が正常な位置関係を失い、ずれてしまった状態です。関節包や靱帯も損傷していることが多く、早期対応が重要です。
● 亜脱臼との違い
脱臼:完全に関節から外れた状態で、自然には戻らない 亜脱臼:一時的に外れかけたが自然に元に戻る状態
● 主な発生部位
肩関節 指関節 顎関節
● 主な症状
関節の変形と痛み 可動不能 感覚の麻痺や痺れ(神経圧迫の可能性あり)
● 対応
絶対に素人が整復しないこと 医師による整復と画像診断(レントゲン・MRI) 靱帯や関節包の回復後に、インナーマッスル強化と再発予防トレーニングを実施
⑤ 腱炎(Tendinitis)
● 定義
腱炎は、腱に過度な繰り返しの負荷が加わることで炎症が生じた状態です。慢性化すると腱症(tendinosis)へ移行し、断裂リスクが高まります。
● よく見られる部位
アキレス腱炎 上腕二頭筋長頭腱炎 テニス肘(外側上顆炎) 回旋筋腱板炎(肩)
● 主な症状
運動時や圧迫時の痛み 腫れや熱感 可動時の違和感、こわばり
● 対応
炎症期は安静とアイシング エキセントリックトレーニング(腱への再血流促進)で回復を促す 長期化する場合はフォーム改善・オーバーユース対策も必要
⑥ 疲労骨折(Stress Fracture)
● 定義
疲労骨折とは、比較的小さな外力でも繰り返し加わることで発生する骨折で、明確な外傷はなくても、骨の微細な損傷が蓄積して起こります。
● 主な発生部位
脛骨 中足骨 腓骨 第四腰椎(特に中高生アスリート)
● 原因
過度なジャンプ・ランニング 着地衝撃の繰り返し 栄養不足(カルシウム、ビタミンD欠乏)
● 主な症状
運動中〜後の鈍痛 腫れや圧痛 レントゲンで映らないこともある(MRIや骨シンチが有効)
● 対応
一時的な運動中止と荷重制限 栄養管理(特に骨代謝に関わる栄養素の補給) 着地動作の見直しやシューズの選定も重要
⑦ 慢性腰痛(Chronic Low Back Pain)
● 定義
慢性腰痛とは、3か月以上継続する腰部の痛みを指します。筋肉だけでなく、関節、神経、心理的要因などが複合的に関与することも多く、トレーナーの対応には慎重さが求められます。
● 主な原因
筋筋膜性腰痛(最も一般的) 、ストレス、姿勢の癖、筋力バランスの崩れ
● パーソナルトレーナーの役割
医師の診断後、安全な範囲での運動処方を提供 腹横筋・多裂筋などの体幹深層筋(コア)の活性化 股関節や骨盤周囲の柔軟性の向上 日常動作や姿勢の指導
筋骨格系障害の予防策【6つの原則】
1. 適切なウォーミングアップ
軽い有酸素運動+動的ストレッチで関節可動域と筋温を向上
2. 運動後の静的ストレッチ
筋緊張の緩和と柔軟性維持に効果的
3. 正しいトレーニング設計
個人に合った負荷、頻度、回復サイクルを設計
4. 安全なトレーニング環境
滑りやすい床、不安定な地面などは避ける
5. 適切なギアとシューズ選び
種目に応じた靴、サポーター、パワーグリップなどを活用
6. 栄養・休養の最適化
タンパク質、カルシウム、ビタミンDなどの摂取と良質な睡眠
おわりに
筋骨格系の傷害は、正しい知識と初期対応、そして再発予防の工夫によってコントロール可能なものです。
ケガのリスクを減らし、トレーニングを継続していきましょう。