クレアチンキナーゼ(CK値)でわかるオーバートレーニング症候群の予防と対策
なぜトレーニングでCK値が重要なのか?
筋トレやランニングなどのスポーツに打ち込む方の多くが、一度は「疲れが抜けない」「練習しているのにパフォーマンスが落ちている」と感じたことがあるのではないでしょうか。
その原因の一つがオーバートレーニング症候群です。そして、この状態を客観的にチェックするための有効な指標がクレアチンキナーゼ(CK値)です。
オーバートレーニング症候群とは?
慢性的な疲労が積み重なる危険な状態
オーバートレーニング症候群とは、トレーニングによって生じた疲労が十分に回復せずに積み重なり、心身に慢性的な不調を引き起こす状態を指します。
スポーツでは日常生活以上の強い負荷を繰り返し体に与えます。これは「過負荷の原則」「継続性の原則」として、身体機能を高めるためには必要不可欠です。しかし、休養や栄養が不十分なまま負荷を続けると、疲労が回復しきれず、やがてパフォーマンス低下につながります。
主な症状
オーバートレーニング症候群は単なる「疲れ」ではなく、次のような幅広い症状を伴います。
✅ パフォーマンス低下(記録が伸びない、重さが扱えない)
✅ 疲れやすい、全身の倦怠感
✅ 食欲不振
✅ 入眠困難・睡眠の質低下
✅ 集中力低下・情緒不安定
✅ 安静時の心拍数や血圧上昇
これらが長引く場合、ただの「一時的な疲れ」ではなく、オーバートレーニング症候群の可能性があります。
クレアチンキナーゼ(CK値)とは?
CKの役割
クレアチンキナーゼ(Creatine Kinase, CK)は、筋肉の収縮に必要なエネルギー(ATP)の代謝を助ける重要な酵素です。
血液検査で測定でき、筋肉の損傷や疲労度を客観的に評価できる指標として活用されます。
筋肉量が多く、運動量の多いアスリートでは一般の人よりも高い値を示す傾向があります。
CK値の目安
CK値は個人差が大きく、運動直後は一時的に高くなることもあります。そのため「連続して高い数値が続いていないか」を見ることが重要です。
・~300 IU/L
正常範囲。翌日までこの数値が残る場合は、クールダウン不足の可能性があります。
・500 IU/L前後
中程度の疲労が蓄積している状態。休養を意識すべき段階です。
・700〜800 IU/L
強い疲労が見られる状態。練習をかなりセーブする必要があります。
・1,000 IU/L以上
故障リスクが非常に高まる数値。この状態でトレーニングを続ければ怪我につながる可能性が大きいです。
特に「普段通りの練習」でもCK値が高い状態が続く場合は注意が必要です。
CK値をどう活用すべきか?
疲労度の客観的チェック
オーバートレーニング症候群の厄介な点は、「本人に疲労の自覚がないことが多い」ということです。
CK値を測ることで、自覚症状がなくても体の内部で疲労が蓄積していないかを確認できます。
実際の現場での活用例
・試合期や合宿期に定期的に採血し、疲労度をチェック
・ トレーニング量を増やす際にCK値を参考にし、負荷を調整
・体調不良の原因が「単なる疲労」なのか「病気」なのかを見分ける材料に
特にアスリートにとっては「感覚に頼らないコンディション管理」として非常に有効です。
オーバートレーニングを予防する方法
オーバートレーニングを防ぐには「休養・栄養・計画的な負荷管理」が不可欠です。
1. 定期的な休養をとる
・週に1日は完全休養日を設ける
・ 睡眠時間を十分に確保する(7時間を目安に)
2. 練習の強度と時間をコントロール
・急激な練習量の増加を避ける 強
・度の高い日と軽い日を交互に配置する(オフロード・オンロードの考え方)
3. 個別性を重視する
・チーム練習では体力差があるため、グループ分けや個別メニューが有効
・ 疲労が残っている選手には調整メニューを導入する
4. 栄養と水分補給
・炭水化物・たんぱく質をバランス良く摂取
・ビタミン・ミネラルで回復をサポート
・脱水は疲労を悪化させるため、水分補給も重要
5. 主観的疲労感と客観的データの両立
・「疲れていないつもり」でもCK値や心拍数の変化を確認する
・コンディションノートをつけるのも有効
まとめ:CK値を上手に活用して安全にトレーニングを続けよう
オーバートレーニング症候群は、努力家のアスリートほど陥りやすい落とし穴です。
・CK値は筋肉疲労を客観的に把握できる指標
・ 高値が続く場合はトレーニング量を調整し、休養を優先する
・休養・栄養・負荷管理を意識することでオーバートレーニングは予防できる
トレーニングで強くなることは素晴らしいことですが、無理をして怪我や慢性疲労に陥っては元も子もありません。
「追い込み」と「休養」のバランスを取りながら、CK値も活用して賢く体を鍛えていきましょう。