「ベンチプレスの重量をもっと伸ばしたい」
筋力トレーニングを続けている方であれば、一度は考えたことがある目標です。
ベンチプレスの強さは、腕の長さや筋肉量だけで決まるものではありません。
主に関係するのは、次の要素です。
✅ 大胸筋・上腕三頭筋・三角筋の筋力と筋量
✅ 高重量を扱う技術
✅ 骨格や腕の長さ
✅ フォームとバーベル軌道
✅ 練習量と疲労管理
私は1991年からベンチプレスを継続し、体重67kgで205kgを挙げています。
長年取り組んできた経験からも、高重量を挙げるには、筋力、技術、継続のすべてが必要だと感じています。
① 骨格は影響するが、すべてではない
ベンチプレスでは、腕が短く、胸郭が厚い人ほど、バーベルの移動距離が短くなりやすい傾向があります。
反対に、腕が長い人は、胸からロックアウトまでの距離が長くなる場合があります。
ただし、腕の長さだけで強さが決まるわけではありません。
グリップ幅、アーチ、胸に下ろす位置、肘の向きなどを自分の体格に合わせることで、力を効率よく伝えられます。
大切なのは、強い選手のフォームをそのまま真似するのではなく、自分の骨格に合った形を見つけることです。
② 高重量には筋肉量が必要
ベンチプレスでは、主に次の筋肉が働きます。
・大胸筋
・上腕三頭筋
・三角筋前部
さらに、広背筋や僧帽筋なども、上半身を安定させるために重要です。
筋肉量が増えれば、大きな力を発揮できる可能性も高まります。
ただし、筋肉を大きくするだけでは十分ではありません。
高重量を挙げるには、その筋力をベンチプレス動作の中で発揮する練習が必要です。
③ 高重量を扱う技術を身につける
筋肥大を目的としたトレーニングと、1回だけ最大重量を挙げる能力は同じではありません。
1RMを伸ばしたい場合は、低回数で重い重量を扱う練習も必要です。
ただし、毎回限界重量に挑戦する必要はありません。
頻繁に失敗すると、
・フォームが崩れる
・疲労が蓄積する
・肩や肘への負担が増える
・成功動作を練習できない
といった問題が起こります。
1〜5回程度の低回数を中心に、少し余裕を残しながら成功回数を積み重ねることが大切です。
④ フォームの再現性を高める
高重量になるほど、わずかなフォームの違いが成功と失敗を分けます。
特に重要なのは、次のポイントです。
上背部を安定させる
肩甲骨周辺と背中をベンチに固定し、毎回同じ位置からラックアップします。
背中が不安定になると、バーベルを受け止める土台が崩れます。
足で床を押す
レッグドライブは、足で直接バーベルを持ち上げる技術ではありません。
足で床を押すことで上半身を安定させ、胸の高さや姿勢を保ちます。
胸に下ろす位置を一定にする
高重量では、下ろす位置が数cm変わるだけでも力の入り方が変わります。
毎回同じ場所に下ろし、安定した軌道で押し返すことが重要です。
⑤ アーチは無理に高くしない
アーチを作ると胸の位置が高くなり、バーベルの移動距離を短くできる場合があります。
しかし、高いアーチがすべての人に適しているわけではありません。
無理に作ると、
・足が不安定になる
・臀部が浮く
・腰や股関節に負担がかかる
・バーベル軌道が乱れる
可能性があります。
競技ではルールの範囲内で、一般のトレーニングでは無理なく再現できる高さに調整します。
⑥ グリップ幅を使い分ける
グリップ幅によって、可動域や肩・肘への負担は変わります。
一般的には、
・ナローグリップ
・ミディアムグリップ
・ワイドグリップ
に分けられます。
ワイドグリップは移動距離を短くしやすい一方、肩に負担がかかる場合があります。
狭く握ると上腕三頭筋の関与が増えやすくなりますが、可動域は長くなります。
最も広い位置を選ぶのではなく、力を出しやすく、肩や肘に違和感が出ない幅を使うことが重要です。
⑦ 補助種目は弱点に合わせる
補助種目は、多く行えばよいわけではありません。
まずは通常のベンチプレスを中心にし、苦手な位置に合わせて追加します。
胸からの切り返しが弱い場合
・ポーズベンチプレス
・スポトプレス
・ダンベルベンチプレス
中間地点で止まる場合
・テンポベンチプレス
・ピンベンチプレス
・インクラインベンチプレス
ロックアウトが弱い場合
・ナローグリップベンチプレス
・ボードプレス
・上腕三頭筋のトレーニング
ただし、止まる原因は筋力不足だけではありません。
バーベル軌道や肘を伸ばすタイミングが原因になることもあるため、動画でフォームを確認することも大切です。
⑧ 高重量と中重量を組み合わせる
最大筋力を伸ばすには、重い重量への慣れが必要です。
一方、筋肉量を増やすには、ある程度の反復回数やセット数も欠かせません。
そのため、
・1〜3回で高重量に慣れる
・4〜6回で筋力と練習量を確保する
・6〜10回で筋肥大を狙う
というように、目的の異なるトレーニングを組み合わせます。
高重量だけでも、中重量だけでもなく、両方を継続することが重要です。
⑨ 体重を増やせば必ず強くなるわけではない
体重が増えると筋量を増やしやすくなり、上半身も安定しやすくなる場合があります。
しかし、増えた体重の大部分が体脂肪であれば、ベンチプレスの記録が同じ割合で伸びるとは限りません。
増量する場合は、
・体重
・体脂肪率
・腹囲
・挙上重量
・階級
を確認しながら、急激に増やさないことが大切です。
体重を維持したままでも、フォームやトレーニング内容を改善することで記録が伸びる場合があります。
⑩ 安全に高重量を扱う
高重量のベンチプレスでは、肩、肘、大胸筋周辺に大きな負担がかかります。
安全のために、
✅ セーフティーバーを適切な高さに設定する
✅ 可能な限り補助者をつける
✅ ラックの高さを毎回そろえる
✅ 痛みがある状態で無理をしない
✅ フォームが崩れたらセットを終了する
ことを徹底します。
成功率の低い重量に何度も挑戦することが、強いトレーニングではありません。
安定して成功できる重量で質の高い練習を重ねる方が、長期的な記録向上につながります。
ベンチプレスの高重量は積み重ねで決まる
ベンチプレスには、骨格による有利・不利があります。
しかし、変えられる部分も多くあります。
・筋肉量
・高重量を扱う技術
・バーベル軌道
・グリップ幅
・フォームの安定性
・練習頻度
・疲労と体重の管理
これらを少しずつ改善することで、自分自身の記録を伸ばせる可能性は高まります。
ベンチプレスで高重量を挙げるために必要なのは、特別な才能だけではありません。
自分に合ったフォームを作り、必要な筋肉を鍛え、成功できる練習を長く続けることが最も重要です。
小濱裕司

