トレーニングをしている方なら、「年齢を重ねると筋肉が落ちる」とよく耳にすると思います。
実は、落ちていくのは「筋力(重いものを持ち上げる力)」だけではありません。
もっと早く落ちていくのが、「筋パワー(力 × 速さ)」です。
特に、歩く・立ち上がる・階段を上がるといった日常動作に必要なのは、この“速く出す力”=パワーです。
つまり、筋力よりも筋パワーが落ちると、転倒しやすくなったり、動きが鈍くなったりするんです。
若い人・高齢者・80代以上でどれくらい違うの?
最新の研究では、膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)のピークパワーを年齢別に比較しています。
結果は次の通りです。
・男性では、1年で約1.0%(約6.5W)ずつ低下
・女性では、1年で約0.9%(約4.2W)ずつ低下
つまり、20代を100%とすると、80代では約40〜50%も低下してしまう計算になります。
しかも、「ゆっくり力を出す」よりも、「速く力を出す」動きほど低下が大きいことが分かっています。
特に80代以上の方では、膝を素早く伸ばす力が急激に弱まり、立ち上がりや階段昇降のスピードが遅くなる傾向が顕著です。
これは筋肉量の減少だけでなく、筋肉の“反応スピード”が落ちているためです。
なぜパワーが落ちるのか?
筋パワーの低下は、筋肉が小さくなるだけではなく、
筋肉が「どれだけ速く収縮できるか」という筋線維の性質の変化や、
「脳からの信号伝達(神経の反応スピード)」の低下が原因です。
若い頃は、速く反応して力を一気に出すことができますが、
年齢とともにこのスピードが遅くなり、結果的に”速く動く力”が落ちるのです。
パワーを維持・向上させるためのトレーニング
① 軽めの負荷で「速く」動く
高齢者や初心者でも安全に行えるのが、スピードを意識したトレーニング。
軽〜中程度の重さ(最大の30〜60%程度)で、
「押す・立ち上がる・伸ばす」といった動作を素早く行うことがポイントです。
例:
・レッグプレスで押し出す時だけ素早く
・椅子からの立ち上がりをできるだけ速く
・パワープレート上でリズミカルにスクワット
こうした“スピード刺激”が、加齢で失われがちな神経反応を活性化させてくれます。
② 「安全に速く」を意識する
「速く動く」と聞くと危険に思う方もいますが、
実際にはフォームを崩さず、安全な範囲でスピードを上げることが大切です。
重すぎる負荷で頑張るよりも、「軽く、速く、丁寧に」が基本。
トレーニング初心者や膝に不安がある方でも、
スキルランやエンコンパス、パワープレートなどを使えば、
膝への負担を最小限にしながら安全に“筋パワー”を引き出すことができます。
③ 神経を鍛える
加齢によって衰えるのは、筋肉そのものだけではありません。
「動こう!」と思ってから実際に筋肉が動くまでの反応時間も遅くなります。
これを鍛えるには、意識的に“素早く反応する練習”が効果的です。
たとえば、
「よーいドン!」で立ち上がる
・軽いメディシンボールを素早く押し出す
・軽負荷でのジャンプ動作(膝の状態に合わせて)
など、瞬発的な動きを取り入れることがポイントです。
小濱トレーニングジムでの実践
当ジムでは、年齢や体力、関節の状態に合わせて、
安全に“筋パワー”を引き出すプログラムを行っています。
・高齢の方でも安心してできるパワートレーニング
・パワープレートやエンコンパスを使った神経刺激トレーニング
・膝痛や腰痛を持つ方にも対応したフォーム指導
「最近、動きが遅くなった気がする」
「立ち上がるのがつらい」「つまずくことが増えた」
そんな方は、筋力ではなく“筋パワー”が落ちているサインかもしれません。
まとめ
・年齢とともに落ちるのは筋力よりも筋パワー
・膝伸筋(太もも前)のピークパワーは年間約1%ずつ低下
・特に80代では20代の半分以下まで下がる
・日常生活の「立つ・歩く・階段」が重くなるのはパワー不足のサイン
・軽い負荷で速く動く“スピードトレーニング”が有効
年齢を重ねても「動ける体」を保つには、
筋肉を“強く”するだけでなく、“速く”動かすことが大切です。
小濱トレーニングジムでは、その「速く動ける体」を取り戻すためのトレーニングを、
安全かつ科学的にサポートしています。
🧠 参考文献
Marquette University, Journal of Applied Physiology, 2023
(若年・高齢・超高齢者の膝伸筋ピークパワー比較研究より)