腱板断裂の症状・原因・治療法|五十肩との違いと正しい向き合い方

腱板断裂とは?

肩の痛みの原因の一つに「腱板断裂(けんばんだんれつ)」があります。病名からは「完全に切れてしまう恐ろしい病気」という印象を持つ方も多いかもしれません。しかし実際には、徐々に進行するケースも多く、症状の程度や治療法は人によって大きく異なります。

腱板とは何か?

腱板は、肩のインナーマッスルと呼ばれる4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の腱が合わさり、肩の骨に付着している幅広い腱組織のことです。英語では「ローテーターカフ(Rotator cuff)」と呼ばれ、「回旋腱板」と訳されます。その名の通り、腕を回旋させたり、肩関節を安定させたりする重要な役割を担っています。

肩は人体の中でも可動域が非常に広く、脱臼しやすいデリケートな関節です。腱板は、その肩関節を安定させる「支え」として働いています。

腱板断裂の原因

腱板断裂には大きく分けて二つの原因があります。

①加齢による変性断裂

60歳以降になると腱板の組織が徐々に弱くなり、日常生活の中で少しずつ傷んで断裂していきます。この場合、いつ切れたのか自覚できないことも多く、「気づかないうちに進行していた」という方も少なくありません。

②外傷による急性断裂

転倒して肩を強打したり、スポーツや重い物を扱う作業で強い力が加わったりすると、腱板が突然断裂することがあります。この場合は激痛を伴い、腕がほとんど上がらなくなることもあります。ベンチプレスや投球動作などでも発症するケースがあります。

腱板断裂の症状

腱板断裂でよくみられる症状は次のとおりです。

・腕を回す(回旋する)動きでの痛み → 例えばドアノブを回すとき、ペットボトルのフタをひねるときに痛みが出ることがあります。

・ 腕を遠くに伸ばす動きでの痛み → 車の窓から駐車券を取るときのような「リーチ動作」で痛みが出やすくなります。

・夜間痛 → 横になると肩に負担がかかり、眠れないほど痛むこともあります。

・ 可動域制限や筋力低下 → 腕を上げにくくなったり、力が入りにくくなったりします。

ここで注意が必要なのは、「腱板断裂だから必ず五十肩(凍結肩)より軽い」とは言えない点です。五十肩では強い可動域制限と痛みが長期に続きますが、腱板断裂でも急性期は強い痛みや夜間痛が出るため、症状の重さを単純に比較することはできません。

部分断裂と完全断裂の違い

腱板断裂には次の二つのタイプがあります。

⑴部分断裂:腱板の一部が骨から剥がれた状態。まだ一部は付着しており、症状が軽いこともある。

⑵完全断裂:腱板全層に穴が空いた状態。腕が上がらない、力が入らないなど機能障害が強くなる。

アキレス腱断裂と異なり、腱板が真っ二つに分かれるわけではなく、「板に穴が空く」ように断裂していくのが特徴です。

診断方法

レントゲンでは腱板そのものは写りません。骨以外の筋肉や腱といった「軟部組織」を確認するにはMRI検査が有効です。超音波検査で確認できる場合もあります。肩の痛みが長引く場合は、早めに整形外科で診察を受けることが大切です。

腱板断裂の治療法

腱板断裂は自然治癒しにくい病気です。放置すると断裂が拡大し、筋肉が萎縮・脂肪変性を起こすため、早期対応が望まれます。治療法は大きく二つに分かれます。

⑴保存療法

・消炎鎮痛剤や注射による痛みのコントロール

・リハビリ(肩周囲筋の強化・可動域訓練)

・ 生活動作の工夫(負担の大きい動きを避ける) → 高齢者や活動量が少ない方では、保存療法で十分に日常生活を送れることがあります。

⑵手術療法

・断裂した腱板を骨に縫い付ける「腱板修復術」

・ 関節鏡視下で行う低侵襲手術が主流 → 若年者や活動性の高い方、大きな断裂や強い機能障害がある場合に検討されます。

手術の判断基準

「夜間痛がある=手術」というわけではありません。手術の判断は以下を総合的に考慮して行われます。

・痛みや機能障害の強さ

・保存療法での改善の有無

・年齢や活動レベル

・断裂の大きさ・進行度

日常生活に大きな支障があり、リハビリで改善が見られない場合は、手術が検討されます。

まとめ

腱板断裂は、加齢による変性や外傷によって肩のインナーマッスルの腱が損傷する病気です。腕をひねる・遠くに伸ばすと痛む、夜眠れないほどの痛みが出るなどの症状が特徴的です。

一方で「腱板断裂=必ず重症」「手術しかない」というイメージは誤解です。保存療法で改善する場合も多く、治療方針は年齢や生活スタイル、症状の程度によって大きく変わります。

肩の痛みが続く場合は放置せず、整形外科での早期診断を受けることが大切です。正しい知識を持つことで、不安に振り回されずに適切な対応ができるようになります。

👉 この内容は、肩の痛みに悩む方や腱板断裂と診断された方が「病気の全体像」を理解し、治療方針を検討する際の参考になるはずです。