身体能力を上げるとは何を鍛えることか
― 山本義徳先生 × YA-MAN選手のYouTube動画から見える本質 ―
山本義徳先生の理論には、一貫した軸があります。
それは、
筋肉を鍛えることと、身体能力を高めることは別物である
ということです。
今回のYouTube動画はこちらです。
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=r5pt40d4ONM
この動画は格闘家向けの内容ですが、本質はすべての競技者、そして本気で強くなりたい人に通じます。
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■ 身体能力とは「出力の速さ × 連動」である
筋肉が大きい=強い。
これは半分正解です。
しかし競技では、こうなります。
「どれだけ速く、どれだけ無駄なく、全身を使えるか」
パンチを例にします。
足で地面を踏む
↓
股関節が伸びる
↓
骨盤が回る
↓
胸郭が回る
↓
肩が加速する
↓
拳が当たる
この一連の動作は0.2秒前後で起きています。
この中のどこかが弱ければ、
どれだけ腕が太くても威力は落ちます。
身体能力とは、
キネティックチェーン(運動連鎖)の完成度です。
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■ 最大筋力だけでは足りない理由
競技動作の多くは0.1〜0.3秒。
この短時間で使える筋力は、最大筋力の一部です。
そこで重要になるのが
RFD(Rate of Force Development)=力の立ち上がり速度
ゆっくり重いものを持つ能力と、
瞬時に最大出力へ到達する能力は別物です。
神経の発火速度
高閾値運動単位の動員
発火頻度(レートコーディング)
ここが速くならなければ、身体能力は伸びません。
「重さ」だけを追うトレーニングは、途中で頭打ちになります。
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■ ボトルネックがすべてを決める
身体はシステムです。
一番弱い部分が全体を制限します。
・中殿筋が弱い → 重心が流れる
・腹斜筋が弱い → 回旋が抜ける
・ハムが弱い → 初速が出ない
・肩甲帯が不安定 → 上肢出力が減衰
これは水道管と同じです。
一番細い部分が流量を決める。
だから大切なのは、
「何をやるか」ではなく
「どこが弱いか」。
YA-MAN選手が相手の癖を分析するように、
トレーニングもまず分析です。
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■ 動画で紹介された3種目の“本当の意味”
① ターキッシュ・ゲットアップ
これは体幹種目ではありません。
抗回旋 × 肩安定 × 股関節連動の統合
片側負荷は神経系に高度な協調を要求します。
バランスを崩さずに立ち上がるという動作は、
・固有受容感覚
・深部安定筋
・姿勢制御
を同時に使います。
これは“筋肥大種目”ではなく、
神経統合トレーニングです。
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② 爆発型フロアプレス
床が可動域を制限することで、
・初動の神経発火
・高閾値運動単位の即時動員
に集中できます。
鍛えているのは胸ではなく、
瞬間出力の神経回路
です。
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③ 連動型ダンベルローイング
反対側を押し込み、
体幹を回旋させながら引く。
広背筋と腹斜筋のタイミングを統合する。
回旋動作は筋力よりタイミングが重要。
これは“背中の筋肥大種目”ではなく、
爆発的回旋の再教育です。
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■ 身体能力=筋肉 × 神経 × 制御
筋肉はエンジン。
神経は制御装置。
さらに、
・重心管理
・タイミング
・恐怖心の制御
・戦略思考
これらが組み合わさって初めて“強さ”になります。
YA-MAN選手が言っていた
「予測できるから怖くない」という言葉。
これは身体能力が“身体だけの話ではない”ことを示しています。
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■ 現場で感じること
長年トレーニング指導をしていて思うのは、
身体能力が高い人は
「力み」が少ないということです。
出力が速い人は、無駄がない。
無駄がないから、速い。
筋肉を増やすことは大事です。
しかしそれは土台です。
そこから先は、
速さ
連動
神経適応
弱点修正
この領域に入らなければなりません。
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■ 結論
身体能力とは、
速く、正確に、全身を統合する能力。
最大筋力
RFD
神経適応
連動性
弱点補強
戦略思考
これらを組み合わせたとき、
はじめて「使える身体」になります。
重さを追うトレーニングは、やがて止まります。
速さと統合を追い始めたとき、
身体は一段階進化します。
以前、山本義徳先生から学ばせていただいた理論は、
現場で指導を続ける中で、確信に変わっています。
強くなりたいなら、
重さだけを追わないこと。
身体能力は、
“統合の質”で決まります。

