久しぶりに運動をすると、数日間つらい筋肉痛が続くことがあります。この現象は、多くの人が経験する「遅発性筋肉痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)」と呼ばれるものです。
遅発性筋肉痛(DOMS)とは?
筋肉痛は運動後6〜8時間ほどでじわじわ出始め、24〜72時間でピークを迎えるのが一般的です。久しぶりの運動や強度の高い動きでは、このピークがさらに長引くことがあります。
DOMSは「筋肉が弱いから起こる」わけではありません。むしろ 慣れていない刺激を受けたときに起こる自然な反応 です。
なぜ筋肉痛は長引くのか?(現在の科学でわかっていること)
DOMSの仕組みは完全に解明されているわけではありませんが、以下のような要因が挙げられます。
1. 筋線維の微細な損傷
特に エキセントリック収縮(伸ばされながら力を出す動き) は筋肉への負荷が大きく、久しぶりだと筋線維や周囲の組織に細かい損傷が起こりやすくなります。
例:重りをゆっくり下ろす動作、階段を下る動作。
2. 修復にともなう炎症反応
微細損傷が起きると、身体は修復のために炎症反応を起こします。このとき、痛みを感じやすくする化学物質(ブラジキニンやプロスタグランジンなど)が増え、筋肉痛が強まると考えられています。
3. 感覚器(筋紡錘など)の働きの変化
損傷や炎症の影響で、筋肉の長さを感知する器官の働きが一時的に変わり、硬さや痛みが強く感じられることがあります。
※「乳酸が原因」という説は、現在では科学的に否定されています。乳酸は運動直後の“熱いような痛み”には関わりますが、DOMSの原因にはなりません。
科学的に効果が認められている筋肉痛の対策
1. 栄養面(修復を助ける)
● タンパク質
最も有効性が確認されているのは、十分なタンパク質摂取です。
体重1kgあたり1.2〜2.0g を目安にすると、修復がスムーズに進みます。
● BCAA / EAA
これらのサプリは筋タンパク質合成をサポートする可能性はありますが、
十分なタンパク質が摂れていれば、これらだけが特別に優れているという強いエビデンスはありません。
● オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)
抗炎症作用があるため、DOMS軽減に効果がある研究が複数存在します。魚油サプリや青魚から摂れる成分です。
2. 身体のケア(動かしながら回復する)
● アクティブレスト(軽い運動)
ウォーキングや軽いサイクリングなどは血流を良くし、痛みの軽減につながることが研究で示されています。
● マッサージ
筋肉の張りを和らげ、主観的な痛みを軽くする効果が報告されています。
痛みそのものの軽減には役立ちますが、回復速度を劇的に早める効果は限定的 とされています。
● 睡眠
成長ホルモンが分泌されるため、修復の中心となる最重要要素です。
7〜8時間の質の高い睡眠 が回復を大きく助けます。
3. 効果が限定的、または推奨されなくなった方法
● アイス(アイシング)
急性のケガ以外では、筋肉痛の回復を遅らせる可能性が指摘されています。
DOMSに対して積極的にアイシングを行うことは、現在では推奨されません。
● NSAIDs(市販の痛み止め)
痛みは和らぎますが、炎症は修復プロセスの一部のため、
常用すると回復を妨げる可能性があります。
どうしても動けない場合の “最終手段” と考えるのが安全です。
最も確実な予防法:強度を徐々に上げること
久しぶりのトレーニングでは、
いきなり強度を上げないことが、筋肉痛を最も防ぎやすいエビデンスのある方法 です。
・負荷を少し下げる
・回数を少なくする
・エキセントリックを丁寧にしすぎない
こうした工夫だけでも、筋肉痛の重症化を大幅に防げます。
まとめ
筋肉痛は「成長の証」ではなく、身体が慣れていない刺激を受けたときの自然な反応 です。
回復を早めるためには、
・十分なタンパク質
・軽めの運動
・睡眠
・必要に応じたケア(マッサージなど)
これらを組み合わせることが、現時点で最も信頼性の高い方法です。

