【ケガ歴だらけでも筋トレは続けられる】

単関節種目で痛む方のための“関節保護型・複合種目戦略”とは?
パーソナルトレーナーの小濱裕司です。
私は、24年以上にわたりパーソナルトレーナーとしてトレーニング指導を行いながら、34年間ウェイトトレーニングを継続し、過去には選手として格闘技にも取り組んできました。
これまで数多くの方の身体づくりと向き合ってきましたが、実は私自身も多くのケガや関節トラブルを経験してきた一人です。
レッグエクステンションをやると膝が痛む… 単関節種目をやると肩や肘が痛む… けれども、ベンチプレスやスクワットはできる…
単関節種目で痛みが出るのは決して特殊なことではありません。
大切なのは、「どう代替して、どのように続けるか」。
本記事では、関節に既往歴がある方が安全かつ効果的にトレーニングを継続するための「種目選択戦略」と「代替種目リスト」を、実践と科学の両面から徹底解説します。
■ はじめに:私自身の“ケガの履歴書”
まずは、私のこれまでの既往歴(ケガ歴)を紹介します。
【上半身】
肩鎖関節脱臼 肩腱板断裂 上腕二頭筋長頭腱炎 肘靱帯損傷(右肘:野球肘、左肘:亜脱臼と靱帯損傷) 手の小指の脱臼骨折 肋骨の疲労骨折 頸椎ヘルニア
【下半身】
前十字靭帯断裂(左膝) 内側側副靱帯断裂(左膝) 半月板損傷 足の小指の骨折 足関節の捻挫 腓骨の骨折と亜脱臼(左側) 腰椎椎間板ヘルニア 腰椎分離症 腰椎すべり症
このように、覚えているだけでも全身に渡ってケガの経験があります。
それでも、私は現在も週5回以上のウェイトトレーニングを継続し、ベンチプレス180kg以上の記録を22年連続で達成しています。
■ 単関節種目で痛みが出るのはなぜか?
単関節種目とは、肘や膝など一つの関節を軸にして行う運動です。
アームカール(肘) トライセプスエクステンション(肘) サイドレイズ(肩) レッグエクステンション(膝) など
これらの種目では、関節に局所的なストレスが集中しやすく、構造的に弱い部分に負担がかかる傾向があります。
● 特に痛みが出やすい理由は…
手首や肘、肩などに対して不自然な軌道を強いる 関節を単独で支える必要があるため、補助筋が使えない 可動域が狭い範囲で繰り返されるため摩耗性ストレスがかかりやすい
私自身も、トライセプスエクステンションやアームカール、レッグエクステンションやサイドレイズを行うと関節に鋭い痛みが走ることがあります。
肘は左肘に亜脱臼と靱帯損傷の後遺症があり、右肘は野球肘(内側側副靱帯損傷)の痕跡が残っています。
このような方にとって、単関節種目はむしろ“危険”なことすらあるのです。
■ それでも筋トレは可能!鍵は“コンパウンド種目”
一方で私の場合、ベンチプレス、ディップス、懸垂、スクワット、デッドリフトなどの複合関節運動(コンパウンド種目)ではフォームや稼働域を調節すると痛みが出にくいのです。
● コンパウンド種目のメリット
力が分散される 複数の筋群が連動するため一部の関節に負担が集中しにくい 動作が自然な軌道をとるため関節の安定性が保たれる
つまり、痛みの出ない形で大きな筋群をしっかり鍛えることができるのが、コンパウンド種目の最大の利点です。
■ 私が行っている代替戦略【上半身編】
【1. サイドレイズの代わり:アーノルドプレス】
三角筋中部〜前部を自然な回旋運動で鍛える 肩甲骨や回旋筋も動員されるため安定性が高い 肩鎖関節や腱板への過負荷を避けられる
【2. ダンベルフライの代わり:ベンチプレス/ケーブルクロスオーバー/ペックフライ】
ベンチプレスで胸全体の厚みを作る ケーブルクロスで内側を仕上げる ペックフライは軌道調整が可能で負担もコントロールしやすい
【3. アームカールの代わり:アンダーグリップチンニング】
肘への剪断ストレスが少なく、二頭筋・広背筋を同時に鍛えることが可能 回外位での引きつけにより、前腕屈筋群や橈側手根屈筋も動員 肘の靱帯損傷による不安定性を補いながら、広い可動域でトレーニングができる
【4. トライセプスエクステンションの代わり:ディップス】
上腕三頭筋を効果的に鍛えると同時に、大胸筋や肩前部も動員 肘の過伸展を避け、自然な肘の伸展軌道を確保できる 関節支持のための体幹安定性向上にもつながる
■ 私が行っている代替戦略【下半身編】
【1. レッグエクステンションの代わり:レッグプレス(浅め)】
左膝の前十字靱帯断裂や半月板損傷の負担を回避しつつ大腿四頭筋を鍛える フットポジションを高くすることで膝の角度を調整 両脚または片脚での実施により左右差にも対応
【2. スクワット:フルではなく可動域を調整して実施】
左膝のコンディションに合わせて浅めのハーフスクワットに ハックスクワットやレバレッジスクワットマシンなどで負荷分散 中臀筋・大臀筋にも刺激が入り、代謝向上にも効果的
【3. ヒップ主導の種目で膝をかばう】
ヒップリフト、グルートブリッジなどは膝関節を通さず臀筋を鍛えられる 反復性が高く、腰の滑り症にも注意を払いながら行える
【4. ENCOMPASSやパワープレートを活用】
可動域の制限、負荷の調整がしやすく、リハビリ段階や関節保護を優先したトレーニングに有効 反復負荷で全身のバランス強化や関節安定性の向上も図れる
■ まとめ:痛みの出ない種目を知り、最大限活かす
私の経験上、関節の既往歴がある方に最も重要なのは「正しい種目選択」です。
痛みを出さずに筋肉を鍛える手段は必ず存在します。
アイソレーションに固執せず、自然な動きを伴うコンパウンド種目を活用する 可動域を限定し、フォームを細かく調整する トレーニングギアやマシンを活かして負担を最小化する
これらを積み重ねることで、「ケガがあってもできる」「関節が不安でも効果を出せる」トレーニングは実現します。
■ 最後に:身体に向き合いながら、前進し続けるという選択
私は、これまで数えきれないほどのケガを経験してきました。
しかし、その度に「どうすれば痛みなく動けるか」「どうすれば負荷を逃がせるか」を考え続けてきました。
今の状態に合ったトレーニングが必ずあります。
必要なのは「諦めないこと」と「正しい工夫」です。
もし、あなたが今、関節に不安を抱えながらも前に進みたいと願うなら、ぜひ今回ご紹介したアプローチを取り入れてみてください。
私自身の経験が、少しでもあなたの力になれたら幸いです。