ノルディックハム

ハムストリングの強化を目的とした「ノルディックハムストリングエクササイズ(NHE)」は、トップアスリートや部活動レベルのスポーツ現場でも注目されるトレーニングです。

ノルディックハムストリングとは?

NHEは、パートナーや器具で足首を固定し、膝を支点に上体をゆっくり前方へ倒していく自重エクササイズです。主にハムストリングスの“遠心性収縮”をターゲットにした動作で、筋力強化とともにケガの予防にも高い効果を発揮します。

科学的に証明された3つの効果

近年の研究では、以下のようなNHEの効果が報告されています。

①ハムストリング損傷のリスクを最大で約50%低減

2011年のPetersenらの研究では、NHEを定期的に行うことで、ハムストリングの損傷リスクを大幅に軽減できることが示されました。

②ハムストリングの筋力強化

 等尺性・遠心性の収縮により、従来のレッグカールよりも高い筋力増加が見込めます。

③筋線維の長さが向上し柔軟性と伸張耐性が向上

筋線維の最適長が延長することで、スポーツ中の急激な伸張刺激にも耐えやすくなります。

しかし…すべての人に適しているわけではない

NHEは非常に優れた種目ではありますが、導入にはいくつかの注意点があります。

⑴フォームが崩れるとケガのリスクが高まる

体幹が抜けたり、腰が反ったりすると、膝や腰への負担が急増します。

⑵筋力が不足している人には危険

ハムストリングを遠心的に支えきれないと、上半身が急落下して顔や胸部を打つ事故も報告されています。

⑶導入時には段階的な進め方が必要

無理のないレベルから始め、補助具やパートナーサポートを活用してフォーム習得を優先しましょう。

安全に導入するためのポイント

NHEを取り入れる場合、以下の点を守ることで効果と安全性を両立できます。

・週1〜2回、1〜3回の低回数からスタート

・ クッションマットやスライディングボードを活用して転倒リスクを抑える

・代替種目(ルーマニアンデッドリフト、シングルレッグデッドリフト)から段階的に移行する

・ すでに腰痛や膝痛がある場合は中止する

NHEが難しい人におすすめの代替種目

以下のエクササイズは、NHEと同様にハムストリングスの強化や遠心性刺激を狙えます。

・ダンベルルーマニアンデッドリフト

膝を軽く曲げて股関節を主軸に前傾する動作で、ハムストリング全体に強い刺激を与えます。

・シングルレッグ・ルーマニアンデッドリフト

バランスと股関節の安定性を高めながら、片脚でハムを集中的に鍛える種目。

・スイスボールレッグカール

自重で行うレッグカール系種目として、導入の初期におすすめです。

まとめ:NHEは“慎重に選ぶ”べき高難度トレーニング

ノルディックハムストリングは、ハムストリング損傷の予防に極めて有効な種目ですが、「全員に必要」な種目ではありません。トレーニング経験や筋力レベル、既往歴を考慮し、無理のない形で段階的に導入することが大切です。

競技レベルや目標に応じて、適切な種目選定を行いましょう。怪我を未然に防ぎ、強くしなやかなハムストリングを育てていくことが、パフォーマンス向上の鍵となります。