術後1年検診を終えて――筋力向上を追求した35年と、これからの筋肥大トレーニング

千葉県木更津市のパーソナルトレーニングジム、小濱トレーニングジム代表・パーソナルトレーナーの小濱裕司です。

2026年9月17日(木)、船橋整形で右肩の術後1年検診を受けました。超音波・MRI・レントゲンの3種類の検査を受け、腱板には異常がないと説明されました。手術から間もなく1年。まずは、その結果にほっとしています。

一方で、肩関節や肩鎖関節には、画像から分かるすり減りがあるとのことでした。修復した腱板の状態を確認できたと同時に、今後の負荷のかけ方を考える機会にもなりました。

肩甲上腕関節は上腕骨と肩甲骨の間、肩鎖関節は鎖骨と肩甲骨の間にある関節です。腱板と関節は異なる組織であり、それぞれの状態を踏まえて運動を調整する必要があります。また、画像上の関節の変化と痛みの強さが、必ずしも一致するわけではありません。米国整形外科学会(AAOS)の解説

私は35年間、挙上重量を伸ばすことに強い関心を持ち、筋力向上を中心にトレーニングを続けてきました。お客様には筋肥大やボディメイクを目的とされる方が多い一方、自分自身の評価基準は、いつも「何kg挙げられるか」に傾いていたと思います。

その中で、ベンチプレス180kg以上を23年間継続してきました。この記録の継続は、長く自分のトレーニングの目標の一つでした。

今でも、挙げようと思えばベンチプレス180kgは挙げられるという手応えがあります。ただ、今後もその記録を継続すること自体を目標にし続けるのは、今の自分にはしっくりきません。

お客様が、私にベンチプレス180kg以上を挙げ続けることを求めているわけではありません。指導者としては、一人ひとりの目的に合ったトレーニングを提供し、その成果につなげることを大切にしたいと思っています。

これまで追求してきた目標が、今の自分にとっても最優先なのか。今回の検診は、トレーニングの目的そのものを見直す機会になりました。

ここで、筋肥大・筋力・パワーの違いを整理します。

● 筋肥大は、主に筋線維が太くなり、筋肉の断面積や体積が増えることです。見た目の大きさにも関係しますが、外見には体脂肪なども影響します。

● 筋力増強は、筋肉と神経系が協調して力を発揮する能力を高めることです。筋肉の大きさに加え、神経系の適応や動作技術も関係します。

● パワーは、単位時間当たりの仕事量を表し、力と速度に関係する能力です。専門的には、筋力と同じ意味ではありません。

筋肥大と筋力向上には、共通するトレーニング効果があります。筋肥大を狙う運動でも筋力は向上しますし、筋力向上を狙う高重量の運動でも筋肉は大きくなります。

2023年の大規模な研究の統合分析でも、さまざまな負荷・セット数・頻度のトレーニングで、筋力と筋肥大の両方に改善が認められました。そのうえで、最大筋力の向上には高重量を用いる方法が有利で、筋肥大には複数セットを行う方法が有効という傾向が示されています。Currierら、2023年

つまり、目的に合わせて、重量・回数・セット数・頻度の配分を変えることが大切です。

最大挙上重量を伸ばしたい場合には、その種目で高重量を扱う練習が重要になります。筋肥大を重視する場合には、筋肉に十分な刺激を与えながら、継続できるトレーニング量を確保する視点が必要です。

筋肥大を目指す際、毎回最大重量に近い負荷を扱うことは必須ではありません。

トレーニング経験のある男性を対象にした12週間の研究では、20〜25回を行う比較的低い負荷と、8〜12回を行う高い負荷を比較しています。両群とも限界まで反復する条件で、筋線維の太さなどは増加し、その増加量に明確な群間差は認められませんでした。筋力も両群で向上しています。Mortonら、2016年

この結果は、重量と回数を組み合わせることで、筋肥大を狙う選択肢を広げられることを示しています。ただ回数だけを増やせばよい、という意味ではありません。

一方、毎セット、反復できなくなるまで追い込む必要があるとも限りません。

2024年の研究では、トレーニング経験者が脚の運動を8週間行い、限界まで反復した場合と、あと1〜2回できる余裕を残した場合で、大腿直筋と外側広筋の筋厚を平均した増加量は同程度でした。限界まで行った場合には、急性の神経筋疲労が大きくなっています。Refaloら、2024年

この「あと何回できるか」という余裕を、RIRと呼びます。筋肥大を目指す際にも、刺激と疲労の両方を考えるための指標になります。ただし、この研究は手術後の肩や関節のすり減りに対する安全性を調べたものではありません。私自身への適用は、医師の指示と身体の反応に合わせて調整します。

現在の私には、高重量のマシン種目で関節が痛くなりやすいという傾向があります。

肩ではインクラインやデクラインを含むチェストプレス、膝ではハックスクワットや高重量のレッグプレスで痛みが出ます。一方、フリーウェイトでは動かし方を調整でき、ニーラップやエルボーラップを使用することで痛みを抑えられる場面があります。

関節への負荷は、器具の種類や表示重量だけで決まるものではありません。ベンチプレスの研究でも、握り幅や肩甲骨の位置によって、肩関節・肩鎖関節にかかる力の推定値が変わっています。ただし、これは関節負荷をモデルで推定した研究であり、特定のフォームの安全性を保証するものではありません。Noteboomら、2024年

私の場合も、マシンで痛む理由を「特定の関節に負荷が集中するから」と断定することはできません。実際に痛みなく行える種目・重量・可動域を選び、終了後の反応まで確認することを重視します。ラップで痛みが減ることだけで、関節内部の負担が十分に減っているとは判断できません。

また、35年間の高重量トレーニングが、今回のすり減りにどの程度関係しているかも分かりません。「長く鍛えたから関節が消耗した」と単純には結びつけず、今の身体の状態に合わせて、これからの方法を考えたいと思います。

筋肥大を重視する方向へ変えても、重量を下げて回数やセット数を増やせば、必ず関節に優しくなるわけではありません。目的の変更と併せて、トレーニング全体の負荷を見直す必要があります。

今後は、次の点に比重を置いていきたいと考えています。

1. 最大重量への挑戦頻度を見直す。

関節の状態を確認し、反復を制御できる重量で、筋肉に必要な刺激を与える。

2. 回数やセット数を急に増やさない。

重量を下げた分を、そのまま大量の反復で補おうとせず、仕事を含めた疲労や回復状況に合わせる。

3. 右肩と右上腕二頭筋の機能回復にも取り組む。

左右で無理に重量をそろえず、右側で痛みなく制御できる負荷を選ぶ。力の入りにくさを、鍛えてこなかったことだけで説明せず、動作や筋力の確認も行う。

4. 進歩を複数の指標で確認する。

挙上重量に加え、筋肉の大きさ、同じ重量での動作の安定、左右差、トレーニング後の関節の状態も見ていく。

実は検診前日のデッドリフトでも、考え方の変化を感じる場面がありました。

220kg×5回、225kg×5回を行いましたが、脚と背中に疲労があり、腰に負荷が集まる感覚があったため、予定していた230kg×5回は見送りました。翌日の移動や検査、その後の仕事まで考えた判断です。

入院前の自分なら、そのまま続けていたと思います。手術と入院を経験してからは、その日の達成感に加えて、翌日の生活や仕事も考えるようになりました。

小濱トレーニングジムでの指導でも、お客様が望む変化に合わせて、トレーニングの内容と評価基準を選ぶことを大切にしています。身体を大きくしたい方、挙上重量を伸ばしたい方、競技で力を発揮したい方では、重視する要素が変わります。

私自身も、筋力を追求してきた経験を活かしながら、筋肉の大きさや左右差、動作の制御、指導を続けられる身体を、自分の目標として重視していきたいと考えています。

これからもトレーニングと指導を続けるために、その日の状態に合わせて調整していきます。