【実体験と考察】チェストプレスで高重量を扱えても、なぜベンチプレスは伸びないのか?
ベンチプレスとチェストプレス――いずれも大胸筋を鍛える代表的なプレス系種目ですが、「チェストプレスでは重い重量を扱えるのに、ベンチプレスになると急にキツくなる」「同じような重量でも、ベンチプレスの方が圧倒的に疲れる」と感じたことはないでしょうか。
今回は、私自身が2025年6月25日(水)に実施したトレーニング実験をもとに、ベンチプレスとチェストプレスの負荷の違いとその理由を、神経系・安定性・心理的要素などの観点から詳しく解説します。
ベンチプレスとチェストプレスの基本的な違い
ベンチプレスの特徴
フリーウエイトで軌道が自由 肩甲骨、体幹、脚を含む全身の安定性が必要
バーのコントロールを自分で行う
潰れる恐怖があり、心理的ブレーキがかかる
チェストプレスの特徴
軌道が固定されたマシンで安全性が高い
安定性が確保されており、対象筋に集中しやすい
潰れるリスクがなく、限界まで追い込みやすい
神経系や体幹の関与が少ない分、身体への負担も少なめに感じる
【実験報告】ベンチプレスとインクラインチェストプレスの比較
2025年6月25日(水)に、以下のような実験的セッションを行いました。
実施内容:(減量中なので普段より数値が低いことはご了承ください)
ベンチプレス
170kg ×2セット
140kg × 9回 × 2セット
ハンマーストレングス インクラインチェストプレス 167.2kg × 10回 × 2セット(ベンチプレスの直後)
実際の体感:
チェストプレスの方が重量も回数も上(167.2kg×10回)
ベンチプレス後で疲労が蓄積した状態で実施 にもかかわらず、チェストプレスの方が明らかに楽に感じた
そして、私自身は長年ベンチプレスを行って動作に慣れているベンチプレスの方が“辛い”と感じたのです。
デクラインチェストプレスで205kgでも楽に感じるが…
同じハンマーストレングス社製のデクラインチェストプレスでは、20kgプレートを10枚つけて205kgで実施しても、かなり楽に感じることがあります。
ただし、20kgプレートを10枚つけると落下止めの金具を差し込めない状態になり、マシンからプレートが落下するリスクが高くなるため、安全性を考慮して普段は実施していません。
一方、インクラインチェストプレスは構造的に挙上重量が落ちやすいため、あえて“アーチを組んで”実施し、ベンチプレスに近い身体の使い方を再現しています。
チェストプレスの方が楽に感じる3つの理由
1. 安定性の違い(スタビライザーの負担)
ベンチプレスはバーの軌道を自分でコントロールするため、胸以外にも肩甲骨、体幹、下半身がフル稼働します。
チェストプレスはマシンの軌道が安定しているため、対象筋(大胸筋など)に集中でき、体感的な疲労は軽くなります。
2. 神経系への負担の違い
フリーウエイトでは筋力だけでなく、神経系の制御(タイミング、連動、安定)が求められます。
一方、チェストプレスは神経系の動員が限定的なため、筋肉だけを使って動作する感覚で、疲れが少ないと感じやすくなります。
3. 心理的ブレーキの有無
ベンチプレスでは、「潰れたら危ない」という不安が常に付きまとい、無意識に出力を抑えてしまうことがあります。
チェストプレスは潰れるリスクがないため、フル出力で動作できる安心感があるのです。
実際の数値比較:同じ重量でも意味は異なる
この日の実験では、
ベンチプレス:140kg × 9回 × 2セット(疲労前)
チェストプレス:167.2kg × 10回 × 2セット(疲労後)
にもかかわらず、チェストプレスの方が楽に感じました。
つまり、数値としての「重量」や「回数」だけでなく、どのような負荷が身体にかかっているのかを正確に見る必要があるということです。
チェストプレスとベンチプレスの使い分け方
チェストプレスが適しているケース:
疲労が溜まっている日や関節の負担を避けたいとき
大胸筋への集中トレーニング(パンプ系)
フォームを崩さず安全に高重量を扱いたいとき
ベンチプレスを伸ばしたいなら:
週1回以上のベンチプレス実施を基本に据える
チェストプレスを“補助種目”として活用する アーチを組んだり、足の使い方を調整してフォーム強化も意識
まとめ
チェストプレスの方が重量も回数も多いのに、楽に感じるのは、筋出力以外の要素(安定性、神経系、心理的負荷)の違いが大きく影響しているため
ベンチプレスに長く慣れていても、マシンの方が楽に感じることは実際に起こる
デクラインチェストプレスでは205kgでも楽に感じるが、20kgプレートを10枚つけると落下止めの金具を差し込めないため、マシンからの落下リスクが高まり、常用はしていない
インクライン種目は重量が落ちやすいため、アーチを組んで実施しベンチプレスに近い動作感覚を再現している
単純な重量比較ではなく、「どんな負荷が身体にかかっているのか」を正確に見極めることが重要
フリーウエイトとマシン、それぞれの特性を理解し、目的に応じた適切な使い分けをすることで、トレーニングの質と成果は大きく変わります。
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