「デッドリフトは腰に負担がかかるから、年齢を重ねたらやめた方がよいのではないか」
このように考える方もいますが、デッドリフトを中止すべき一律の年齢基準はありません。
大切なのは、若い頃と同じ重量、同じ可動域、同じ回数を続けることではなく、その時点の身体に合わせてトレーニング方法を変えることです。
年齢だけでデッドリフトをやめる必要はない
NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)は、65歳以上でも、健康状態やトレーニング経験に合わせた漸進的な筋力トレーニングを推奨しています。
高齢になったから筋力トレーニングをやめるのではなく、種目、強度、回数、休息などを個別に調整することが重要です。
NSCA「Resistance Training for Older Adults」
平均年齢65歳の骨量が低下した女性を対象としたLIFTMOR研究では、専門家の指導下でデッドリフトを含む高強度トレーニングを実施し、骨密度や身体機能の改善が確認されています。
ただし、これは対象者を選別し、専門家が細かく管理した研究です。すべての人が同じ方法で高重量を扱ってよいという意味ではありません。
高重量を扱えることと、続けるべきことは別問題
私は35年間にわたって高重量のウエイトトレーニングを続けてきました。
デッドリフトの過去最高記録は次のとおりです。
- オリンピックシャフト床引きデッドリフト:310kg
- ヘックスバー床引きデッドリフト:340kg
- ラックデッドリフト:360kg
若い頃は、これらの高重量にも耐えられていました。
しかし、40代になっても同じような高重量を続けるなかで、椎間板高の減少や腰椎4番・5番のすべり症が明らかになり、身長も以前より約4cm低くなりました。
2024年には305kgのデッドリフト後に腰を痛め、翌日に腰椎すべり症と診断されています。
もちろん、高重量デッドリフトだけが椎間板の変化や身長低下の原因だったと断定することはできません。加齢、遺伝的要因、身体の左右差、長年の負荷の蓄積など、複数の要因が関係します。
それでも、若い頃と同じ方法を続けることが、現在の身体には合わなくなってきたと考えるには十分な経過でした。
現在は完全な床引きを避けている
現在、オリンピックシャフトを使った完全な床引きデッドリフトでは、腰に強い違和感が出ます。
そのため、完全な床引きにはこだわらず、次の方法へ変更しています。
- オリンピックシャフトではプレートの下にダンベルミットを敷き、開始位置を約5cm高くする
- 床引きを行う場合はヘックスバーを使用する
- パワーラックを使ったラックデッドリフトを取り入れる
- ダンベルデッドリフトで絶対重量を下げる
- サポート式片脚デッドリフトで左右差を確認する
デッドリフトをやめたのではなく、デッドリフトの形を変えたということです。
実際に行っている重量
2026年8月11日は、ヘックスバーデッドリフトを205kgで行う予定でした。
ところが重量を勘違いし、実際には235kg×3回×3セットを行っていました。
235kgを挙げられたということは、現在も大きな筋力が残っているということです。
しかし、「挙げられたから、今後も235kgで続ける」という判断にはなりません。
現在は減量中で食事量をかなり抑えているため、日によって力が出にくく、回復力も通常時とは異なります。また、筋力が残っていても、椎間板や腰椎が同じだけの負荷に耐え続けられるとは限りません。
8月19日には、開始位置の高いラックデッドリフトを230kg×3回×3セット行いました。
今後は、種目ごとに次の範囲を目安としています。
- 約5cm高くしたバーベルデッドリフト:200〜210kg
- ヘックスバーデッドリフト:205〜215kg
- ラックデッドリフト:230〜250kg
- ダンベルデッドリフト:40〜42.5kgを両手に持って8回×2セット
- サポート式片脚デッドリフト:20〜22.5kgで左右8回×2セット
過去最高記録から考えれば余裕のある重量ですが、現在の目的は記録更新ではありません。
トレーニング中だけでなく、当日の夜や翌朝まで腰の状態を悪化させず、筋力を維持することを優先しています。
開始位置を高くすれば必ず安全とは限らない
ラックデッドリフトは、床引きよりも開始位置が高いため、股関節や膝関節の可動域が小さくなり、上体の前傾も抑えやすくなります。
その一方で、高重量を扱いやすくなるため、脊柱に加わる圧縮負荷が必ず軽くなるとは限りません。
私の場合も、ヘックスバーよりラックデッドリフトの方が高重量を扱えます。そのため、開始位置が高いことを理由に、過去の360kgへ近づけるようなトレーニングは行いません。
重いデッドリフトでは、腰椎に大きな圧縮力と剪断力が加わることが報告されています。
Low Back Biomechanics during Repetitive Deadlifts
可動域を短くすることと、重量を増やすことを同時に進めてしまうと、負担を軽減するという本来の目的から外れてしまいます。
ヘックスバーも高重量になれば負担は増える
ヘックスバーデッドリフトは、身体の前にバーベルが位置する通常のデッドリフトより、重量を身体の中心に近づけやすい特徴があります。
研究では、ストレートバーと比較して、ヘックスバーは腰椎と股関節のピークモーメントが小さくなることが報告されています。
ただし、ヘックスバーは高重量を扱いやすい種目でもあります。
フォーム上の負担が軽くなっても、その分だけ重量を増やせば、脊柱への総負荷が軽くなるとは限りません。
私のヘックスバーの最高記録は340kgですが、現在は200kg台前半を中心にしています。
ダンベルや片脚種目も使い分ける
ダンベルデッドリフトは、バーベルより使用重量を下げやすく、ダンベルを身体の近くに保てば、腰椎に加わる外的なモーメントを抑えやすくなります。
片脚デッドリフトは、左右の臀筋やハムストリングスの働きを確認するために有効です。
ただし、片脚種目は骨盤の回旋や体幹の側屈が起こりやすいため、単純に「片脚だから腰に優しい」とは限りません。
私はラックを片手で持つサポート式にして、バランスではなく股関節の動きに集中しています。
継続するために確認していること
現在は、重量だけでなく次の反応を確認しています。
- トレーニング中に鋭い腰痛が出ないか
- 脚への痛みやしびれが出ないか
- 腹圧を保ったまま動作できるか
- 左右で開始姿勢が変わっていないか
- 当日の夜に違和感が強くならないか
- 翌朝までに普段の状態へ戻っているか
- 次回のトレーニングまで疲労が残っていないか
予定重量を挙げられたとしても、翌朝に腰の状態が悪化するのであれば、その重量は現在の身体に適していません。
反対に、過去より軽い重量でも、安定したフォームで継続できれば、筋力や筋量を維持するための十分な刺激になります。
続けるために、やり方を変える
年齢を重ねたからといって、デッドリフトを一律にやめる必要はありません。
一方で、若い頃と同じ種目、同じ可動域、同じ重量にこだわる必要もありません。
- 床引きを高さのあるデッドリフトへ変える
- ストレートバーをヘックスバーへ変える
- ラックの高さを調整する
- バーベルをダンベルへ変える
- 最大重量ではなく余力を残したセットを行う
- 回数やセット数を減らす
- 減量中は通常時より負荷を抑える
このように、身体の状態に応じて方法を変えることで、デッドリフトという動作を長く続けられます。
私自身も、過去の310kg、340kg、360kgという記録を追い続けるのではなく、現在の身体で継続できる方法へ切り替えています。
トレーニングを続けるとは、昔と同じことを続けることではありません。
年齢、既往歴、回復力、現在の目的に合わせて、続けられる形へ変化させることです。
小濱トレーニングジムでは、年齢やトレーニング経験、既往歴、現在の動作を確認しながら、一人ひとりに適した種目と負荷を設定しています。トレーニングを始めたい方は、初回体験から受け付けています。
小濱裕司

