腰痛は腹筋を鍛えれば治る?腰痛改善のために知っておきたい正しい知識と運動

腰痛の約9割を占める非特異的腰痛、画像検査の正しい捉え方、姿勢、腹筋運動、睡眠との関係を解説。腰痛を必要以上に恐れず、安全に運動を再開するための考え方を紹介します。

腰痛になると、「姿勢が悪いから」「腹筋が弱いから」「骨盤がゆがんでいるから」と、一つの原因に結びつけたくなるものです。

しかし、腰痛はそれほど単純ではありません。同じ画像所見があっても痛みが強い人とほとんど痛みを感じない人がいて、同じ運動でも楽になる人と悪化する人がいます。

腰痛を改善へ導くために大切なのは、特定の姿勢や一つの運動を万能視することではなく、重大な病気を見逃さず、自分の症状と負荷に合わせて活動量を段階的に戻していくことです。

腰痛は男女ともに多い「国民病」

厚生労働省の2022年(令和4年)国民生活基礎調査では、病気やけがによる自覚症状のうち、男女ともに腰痛が第1位でした。

腰痛は一部の高齢者や重労働者だけの問題ではありません。デスクワークをする人、家事や育児をする人、スポーツをする人、日頃から筋力トレーニングをしている人にも起こります。

WHO(世界保健機関)も、腰痛を世界的に大きな健康問題として位置づけています。ただし、「腰が痛い」という症状が同じでも、その背景は一人ひとり異なります。

最初に確認すべきなのは、医療機関での評価が必要な腰痛かどうか

腰痛の多くは緊急性の高いものではありませんが、最初からトレーニングやストレッチだけで対応してはいけない場合もあります。

次のような症状がある場合は、運動で様子を見るのではなく、早めに医療機関を受診する必要があります。

● 排尿や排便がしにくい、または失禁する

● 股の間や臀部周辺の感覚が鈍い

● 脚の筋力低下や麻痺が進んでいる

● 発熱や強い倦怠感を伴う

● がんの既往があり、新たに腰痛が出た

● 原因不明の体重減少がある

● 大きな転倒や事故の後から痛みが出た

● 骨粗しょう症があり、軽微な動作の後から強い痛みが出た

これらは、神経の強い圧迫、骨折、感染症、腫瘍などを疑う手がかりになります。一つの症状だけで重大な病気と決まるわけではありませんが、医療機関による評価を優先すべきサインです。

腰痛の約9割を占める「非特異的腰痛」とは

WHOによると、腰痛の約90%は「非特異的腰痛」に分類されます。ただし、この割合は定義や調査対象によって多少変わります。

非特異的腰痛とは、痛みの原因が存在しないという意味ではありません。骨折、感染症、悪性腫瘍、重度の神経障害など、痛みを一つの病気や特定の組織だけで明確に説明できない腰痛を指します。

筋肉、筋膜、椎間板、椎間関節、神経系、日常の負荷、過去の痛み、睡眠、ストレスなど、複数の要素が重なって痛みが生じている可能性があります。

一方、骨折、感染症、腫瘍、炎症性疾患、馬尾症候群など、特定の疾患や病態で説明できる腰痛は「特異的腰痛」と呼ばれます。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、すべり症などの画像所見についても、症状や診察所見と一致し、痛みや神経症状に関与しているかを判断することが重要です。

特異的腰痛だから必ず手術が必要になるわけではありません。画像検査、血液検査、神経学的所見などを組み合わせて診断し、病態に応じて治療方針が決まります。

「レントゲンやMRIでは腰痛が分からない」は正確ではない

腰痛について、「レントゲンやMRIを撮っても意味がない」と言われることがありますが、これは極端な表現です。

正しくは、画像検査だけで痛みの原因を特定できない場合が多いということです。

画像検査は、骨折、脊柱管狭窄、椎間板ヘルニア、すべり症、腫瘍、感染症などを調べるうえで重要です。一方で、椎間板の変性や膨隆などは、腰痛のない人にも加齢とともに高い割合で見つかります。

そのため、「画像に変化があるから必ず痛い」「画像に大きな異常がないから痛くないはず」とは判断できません。画像所見は、痛む場所、下肢症状、筋力、感覚、反射、動作による変化などと合わせて解釈する必要があります。

赤旗徴候がなく、日常生活を送れる一般的な腰痛に対して、最初から全員に画像検査を行うことも推奨されていません。検査結果によって治療方針が変わると判断された場合に行うのが基本です。

私自身も腰椎すべり症と診断されています

私、小濱裕司も、2024年1月にデッドリフト305kgを挙げた後に腰を痛め、さらに同年3月にはスクワット250kgを行った後に再び強い痛みが出ました。整形外科を受診し、腰椎4番・5番のすべり症と診断されています。ただし、これらの挙上だけがすべり症を生じさせたと断定できるわけではありません。

この経験からも、画像所見を無視してよいとは考えていません。しかし、すべり症が写っていることだけで、その日の痛みの強さや、できる運動のすべてが決まるわけでもありません。

実際には、痛みの場所、脚への症状、扱った重量、動作、疲労、回復状態を確認しながら、種目と負荷を調整する必要があります。

「構造上の問題がすべて」と決めつけることも、「画像は関係なく気持ちの問題」と片づけることも、どちらも適切ではありません。

腰痛が長引く背景には身体面と心理社会面の両方がある

腰痛が長引きやすい人には、次のような傾向が報告されています。

● 発症時の痛みが強い

● 痛むことへの恐怖から、必要以上に動かなくなる

● 「動いたら壊れる」と考えて活動を避ける

● 「この腰痛は絶対に治らない」と回復を期待できない

● 治療を受けるだけで、自分で活動を戻す機会が少ない

● 抑うつ、不安、強いストレスがある

● 睡眠の質が低い

● 仕事で重い物を扱う、無理な姿勢が続く

● 肥満、喫煙などの要因が重なっている

ただし、これは「ネガティブに考える人が悪い」という話ではありません。

強い痛みが続けば不安になり、動くことが怖くなるのは自然な反応です。腰痛によって眠れなくなることもあれば、睡眠不足によって痛みを強く感じることもあります。

腰痛は、身体的な負荷、神経系の感受性、心理状態、仕事や家庭環境などが相互に影響する問題です。どれか一つだけを原因にするのではなく、多面的に確認する必要があります。

腰痛を防ぐ「唯一の正しい姿勢」はない

背筋を伸ばした見た目の良い姿勢でも、何時間も動かずに続ければ腰がつらくなることがあります。反対に、少し背中を丸めたからといって、すぐに腰が壊れるわけではありません。

現在の研究では、一つの姿勢だけを腰痛の原因と断定できる強い根拠はありません。大切なのは、負担の少ない姿勢を選びながら、同じ状態を長時間続けないことです。

デスクワークでは、次のような方法が実践しやすいでしょう。

● 椅子の高さや机との距離を調整する

● 足裏が安定するように座る

● 背もたれや肘掛けを必要に応じて使う

● 痛みが出る前に立つ、歩く、座り方を変える

● 仕事中にも短い移動を入れる

「30分に1回動かなければならない」という絶対的な基準があるわけではありません。まずは30~60分ごとを一つの目安に姿勢を変え、自分の症状や仕事内容に合う間隔を探す方法が現実的です。

バランスボールに座れば腰痛が改善するとは限らない

バランスボールは不安定なため、体幹の筋肉が常に働き、腰に良いと思われがちです。

しかし、通常の椅子より腰痛や日常機能を改善する効果は、現在までの研究では明確に確認されていません。長時間座った場合に、腰部や臀部の不快感が強くなった研究もあります。

バランスボールは運動器具として活用できますが、長時間の椅子代わりとして全員に勧められるものではありません。使用する場合も短時間から試し、疲労や痛みが増えるなら中止します。

「上体起こしは腰に悪く、プランクなら安全」とは言い切れない

一般的な上体起こしでは、腰椎を繰り返し曲げる動作が入ります。屈曲動作で腰痛や脚への放散痛が出る人には、症状を悪化させる可能性があります。

ただし、腰を曲げる運動が全員に危険という根拠はありません。腰部脊柱管狭窄症がある人の一部では、腰を少し曲げると症状が楽になる場合もあります。競技歴、筋力、可動域、痛みのタイプによって適した運動は変わります。

また、上体起こしの代わりにプランクを行えば、腰痛が改善するわけでもありません。プランクは体幹を大きく動かさずに保持する運動の一つですが、すべての人に必要な種目でも、最も優れた腹筋運動でもありません。

重要なのは種目名ではなく、次の点です。

● 実施中に痛みが大きく増えない

● 脚のしびれや放散痛が広がらない

● 翌日まで強い悪化が残らない

● 意図した動作を維持できる

● 現在の筋力に合った負荷になっている

● 少しずつ負荷や運動量を高められる

体幹トレーニングには、体を丸める、反らす、ひねる、ひねられないように支えるなど、複数の働きがあります。一つの方向だけに固定せず、病態と目的に応じて選択することが大切です。

多くの腰痛では、安静を続けるより適切に動くことが大切

重大な病気や急性の強い神経症状が除外されている場合、必要以上に安静を続けることは勧められません。

痛みへの恐怖から動かない期間が長くなると、筋力、体力、動作への自信が低下し、日常生活へ戻りにくくなることがあります。

一方で、痛みを無視して高重量を扱い続ければよいわけでもありません。腰痛改善のための運動は、現在の症状に合わせて段階的に進めます。

第1段階 症状を悪化させない動作を確認する

まずは、立つ、座る、歩く、股関節を曲げるなどの基本動作を確認します。呼吸を止め続けず、必要な腹圧を使いながら、どの方向で症状が出るのかを把握します。

医療機関で運動が可能と判断されていても痛みが強い時期は、体を支えられるマシンやENCOMPASS、パワープレートなどを活用し、負担を調整しながら全身を動かす方法もあります。ただし、器具そのものが腰痛を治すわけではなく、症状に合う負荷を選べるかどうかが重要です。

第2段階 下半身と体幹の筋力を戻す

症状が落ち着いてきたら、レッグプレス、ヒップエクステンション系種目、ケーブルトレーニング、ローイングなどを使い、臀部、脚、背中、体幹を段階的に強化します。

腰だけを鍛えるのではなく、股関節や膝関節を使って力を分散できる体をつくることが重要です。

第3段階 日常生活や競技に必要な負荷へ近づける

さらに回復が進み、動作が安定してきたら、スクワット、デッドリフト、スプリットスクワットなども選択肢になります。

腰痛があるから、スクワットやデッドリフトを生涯禁止するという考え方は適切ではありません。ただし、すべての人が行う必要もありません。目的、病態、技術、回復状態に合わせて、可動域、重量、回数、セット数、実施頻度を調整します。

睡眠は腰痛改善の土台になる

睡眠不足になると、同じ刺激でも痛みを強く感じやすくなることが実験研究や系統的レビューで示されています。

腰痛がある人は、運動だけでなく次の点も見直す必要があります。

● 起床時間と就寝時間を大きく乱さない

● 夜遅い時間のカフェインや多量の飲酒を避ける

● 痛みで眠れない状態を放置しない

● トレーニングの負荷と回復時間を調整する

● 長時間座った日の疲労を考慮する

睡眠を改善すれば必ず腰痛が治るわけではありませんが、睡眠不足のままでは痛みのコントロールや運動後の回復が難しくなります。

小濱トレーニングジムが腰痛のある方を指導する際に重視していること

小濱トレーニングジムでは、腰痛に対して一つの種目や一つの姿勢を全員に当てはめることはありません。

次の流れを重視しています。

1. 医療機関での診断、既往歴、現在の症状を確認する

2. 痛みやしびれが出る動作を確認する

3. 現在できる種目と避けるべき負荷を整理する

4. マシン、ENCOMPASS、パワープレート、ケーブルなどを使って負荷を調整する

5. 必要に応じてバーベルやダンベルを段階的に取り入れる

6. 実施後の症状を再確認し、次回の負荷を決める

パーソナルトレーニングは、腰椎すべり症や椎間板ヘルニアなどを診断・治療する医療行為ではありません。医療機関による評価が必要な症状を見逃さず、運動が可能な状態で、症状に配慮しながら筋力と体力を取り戻すことが役割です。

腰痛を必要以上に恐れず、原因を一つに決めつけない

腰痛があるからといって、すぐに腰が壊れているとは限りません。一方で、「画像は関係ない」「気にしなければ治る」と片づけるのも正しくありません。

腰痛改善の基本は、重大な病気を除外したうえで、症状、画像所見、生活習慣、睡眠、仕事、トレーニング負荷を総合的に考えることです。

腹筋運動をすべて禁止する必要も、プランクだけを続ける必要もありません。自分の状態に合う動作を選び、適切な負荷を積み重ねることで、できることを少しずつ増やしていきます。

木更津で、腰痛が落ち着いた後の運動再開や筋力向上を自己流で進めることに不安がある方は、小濱トレーニングジムの初回体験からお申し込みください。

参考資料

● 厚生労働省「2022年(令和4年)国民生活基礎調査の概況」

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● World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults. 2023.

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