「運動すると、膝や腰がすり減るのではないか」
「年齢を考えると、筋トレは控えた方がよいのではないか」
40代以降になると、このような不安を感じる方が増えてきます。
しかし、関節は自動車のタイヤのように、使った分だけ単純にすり減るものではありません。
関節を守るために大切なのは、まったく動かさないことではなく、身体の状態に合った負荷で動かし、少しずつ強くしていくことです。
関節は軟骨だけでできているわけではない
関節というと、骨の表面にある軟骨を思い浮かべる方が多いかもしれません。
実際の関節は、次のような組織が協力して動いています。
- 軟骨
- 骨
- 関節を包む膜
- 靱帯
- 腱
- 筋肉
変形性関節症も、軟骨だけの問題ではなく、関節全体に起こる変化として考えられています。
そのため、関節を守るには、軟骨だけを心配するのではなく、周囲の筋肉を保ち、無理のない範囲で関節を動かすことが重要です。
関節を使わなければ守れるとは限らない
痛みが心配になると、なるべく動かさないようにしたくなります。
もちろん、強い痛みや腫れがあるときに無理をする必要はありません。しかし、必要以上に動かさない期間が続くと、筋力や関節を動かせる範囲が低下することがあります。
筋力が落ちると、立つ、歩く、階段を上るといった日常動作でも身体を安定させにくくなります。
大切なのは、次の2つの中間を見つけることです。
- 痛みを我慢して動きすぎない
- 不安からまったく動かなくならない
関節を守る鍵は、「動かすか、動かさないか」ではなく、「どのくらい動かすか」です。
適度に動かすことが関節の健康につながる
関節軟骨には、血管がほとんどありません。歩いたり膝を曲げ伸ばししたりすると、軟骨に圧力が加わり、水分が移動します。
この繰り返しが、軟骨内の物質交換に関係していると考えられています。
運動直後には軟骨の厚さなどが一時的に変化しますが、時間の経過とともに回復します。健康な膝を対象にした研究では、歩行後は約30分、膝の曲げ伸ばしを繰り返した後は約90分で回復した例が報告されています。
ただし、この数字はすべての人に当てはまるものではありません。年齢、関節の状態、運動内容によって回復時間は変わります。
「動かすと必ずすり減る」と考えるのではなく、運動と休養のバランスを取ることが大切です。
ランニングをすると膝が悪くなるのか
ランニングについても、「走ると膝の軟骨がすり減る」と思われることがあります。
研究では、一般の方が趣味として行うランニングと、膝の変形性関節症との間に、はっきりとした関連は確認されていません。
これは、どれだけ走っても安全という意味ではありません。
次のような条件がある場合は、走る距離や速さを慎重に調整する必要があります。
- 過去に膝の大きな怪我をしている
- 運動後に膝が腫れる
- 膝が崩れるような感覚がある
- 急に走る距離を増やした
- 体重が増えた状態で走り始めた
ウォーキングや自転車、水中運動などから始めても問題ありません。続けられる運動を選ぶことの方が重要です。
関節を守る5つの原則
1.日常的に身体を動かす
特別な運動だけが関節を守るわけではありません。
歩く、階段を使う、掃除をする、買い物に出かけるといった日常の活動も大切です。
長時間座り続ける場合は、ときどき立ち上がり、身体を動かしましょう。
2.筋力を維持する
筋肉には、関節を安定させ、動きを調整する役割があります。
特に40代以降は、何もしなければ少しずつ筋力が低下していきます。関節を守るためにも、週2回程度の筋力トレーニングを取り入れたいところです。
例えば、次のような運動があります。
- 椅子から立ち上がる運動
- スクワット
- ヒップリフト
- 壁を使った腕立て伏せ
- ゴムバンドを引く運動
- 片脚で立つ練習
最初から回数や重量を増やす必要はありません。正しい姿勢で無理なくできる範囲から始めます。
3.必要な範囲で関節を動かす
関節を守るために、誰もが身体を柔らかくする必要はありません。
大切なのは、日常生活や運動に必要な範囲を、自分で安定して動かせることです。
筋力トレーニングも、無理のない範囲で丁寧に動かすことで、筋力と動かせる範囲の両方を改善できる可能性があります。
動きにくい部分がある場合は、ストレッチを加えます。痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。
4.負荷を少しずつ増やす
関節や筋肉、腱は、適切な刺激を受けることで少しずつ適応します。
問題になりやすいのは、負荷そのものよりも、急激な変化です。
- 急に重量を増やす
- 急に運動時間を長くする
- 急に運動回数を増やす
- 久しぶりの運動で以前と同じ内容を行う
重量、回数、運動時間、頻度を一度に増やさず、身体の反応を確認しながら調整しましょう。
運動中だけでなく、その日の夜や翌日の状態まで確認することが大切です。
5.大きな怪我を避ける
過去の大きな関節損傷は、将来の変形性関節症と関係することが分かっています。
特に膝の靱帯や半月板を損傷した経験がある方は、筋力や左右差を確認しながら運動する必要があります。
転倒しやすい運動や、フォームが崩れた状態での無理な反復は避けましょう。
私自身も負荷を下げながら運動を続けています
私は1991年から筋力トレーニングを続け、パーソナルトレーナーとしても25年以上指導していますが、腰や肩、膝などの怪我を経験しています。
腰痛が悪化したときや右肩の手術後も、以前の重量へ急いで戻すことはしませんでした。重量を下げ、種目を変更し、左右の動きや翌日の痛みを確認しながら再開しています。
長く運動を続けるためには、頑張ることだけでなく、その日の身体に合わせて負荷を下げる判断も必要です。
余分な体脂肪を増やさない
体重が増えると、歩行や階段の上り下りで膝や股関節にかかる負担も増えます。
また、体脂肪は単なる重りではなく、身体の炎症に関係する物質を分泌する組織でもあります。
ただし、無理な食事制限で筋肉まで落としてしまうと、かえって関節を支える力が低下します。
食事を極端に減らすのではなく、筋肉を保ちながら余分な体脂肪を減らすことが基本です。
40代以降に取り入れたい運動量
健康づくりの目安として、世界保健機関は成人に次の運動量を勧めています。
- 週150~300分程度の中強度の有酸素運動
- 週2日以上の筋力トレーニング
最初からこの量を目指す必要はありません。
運動習慣がない方は、1回10分程度のウォーキングや、椅子を使ったスクワットなどから始めて構いません。
短い時間でも、継続することで運動量を増やしていけます。
医療機関で確認した方がよい症状
次のような症状がある場合は、自己判断で運動を続けず、医療機関で確認してください。
- 急に強い痛みや腫れが出た
- 関節が赤く熱を持ち、発熱もある
- 関節が引っかかって動かない
- 膝や足が崩れる
- 体重をかけられない
- 関節の形が明らかに変わっている
- しびれや筋力低下がある
- 痛みで眠れない
- 症状が徐々に悪化している
痛みをすべて年齢のせいにせず、必要な場合は原因を確認することも大切です。
関節を守るために必要なのは「適切な負荷」
関節を守るために運動を避け続けると、筋力や体力が低下し、かえって動くことが難しくなる場合があります。
一方で、痛みを我慢して運動量を増やせばよいわけでもありません。
- 日常的に身体を動かす
- 筋力を維持する
- 必要な範囲で関節を動かす
- 負荷を少しずつ増やす
- 大きな怪我を避ける
この5つを意識することが、40代以降も自分の身体で動き続けるための基本です。
運動に不安がある方は、当ジムの初回体験で現在の動きや筋力を確認し、身体の状態に合わせた運動から始めていただけます。
参考資料
- Acute effects of physical activity on human knee articular cartilage(Systematic Reviews, 2023)
- Running volume and knee osteoarthritis(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2023)
- Risk factors for knee osteoarthritis(Osteoarthritis and Cartilage, 2025)
- EULAR recommendations for the non-pharmacological management of hip or knee osteoarthritis
- Resistance training and range of motion(Sports Medicine, 2023)
- WHO Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour

